かわさき未来トーク
文化芸術

出会いで変わった、私の人生。川崎には「居場所」がある

KAI(市川快、ジャンプロープ日本代表選手)
HINATA.M (KADOKAWA DREAMS ディレクター)
KISA (KADOKAWA DREAMS リーダー)
KELO (KADOKAWA DREAMS)
藤田剛士(読売広告社インダストリーコンサルティングセンター 「iBASHOプロジェクト」メンバー)

※敬称略

居場所を見つけられず孤立する若者の存在が社会問題化する中、川崎市では若者たちが、夢中になれることと出会い、人とつながり、自分らしくいられる「居場所」があります。今回は、川崎市を拠点に活躍するプロダンサーやジャンプロープ(縄跳び)のプレイヤーをゲストに迎え、夢中になれるものとの出会いのきっかけや、「居場所」への想いについて伺いました。聞き手は、都市における「人と場所の関係性」を再定義し、個人のアイデンティティと場所の関係性を構築し直すことを目指す「iBASHOプロジェクト」の藤田剛士さん(所属:読売広告社)です。

目次

    川崎から世界へ!ストリートカルチャーの最前線で活躍する4人を紹介

    藤田剛士(以下、藤田):
    川崎に息づく若者文化を通じて、若者の居場所づくりについて考えてみたいと思います。今日は、川崎を拠点に活躍するジャンプロープ日本代表のKAIさん、そしてプロダンスグループKADOKAWA DREAMSからHINATA.Mさん、KISAさん、KELOさんをお迎えしています。まずは、自己紹介をお願いします。

    KAI:
    スポーツ一家に育ち、幼いころからさまざまな競技に挑戦してきましたが、細かいルールに縛られるスポーツにはあまり興味を持てず、物足りない日々を過ごしていました。そんな毎日が、中学2年生のある日を境に一変。たまたま遊びに行った都立目黒高等学校の文化祭でジャンプロープのパフォーマンスを初めて見て、まるで雷に打たれたような衝撃を受けたんです。音楽に合わせて踊るように跳ぶ姿が本当にかっこよくて、「自分がやりたいのはこれだ!」と直感しました。勉強も頑張って無事に目黒高校に入学を果たし、ジャンプロープ漬けの高校時代を過ごしました。卒業後はプロのチームに所属して競技を続け、2025年には川崎市で開催されたジャンプロープの世界大会に出場、ダブルダッチペアとダブルダッチスピードスプリントの2種目で優勝を飾ることができました。川崎はジャンプロープの聖地とも言われる場所で、私自身も高校時代からよく練習に訪れている特別な場所。ここで最高の結果が残せたことがとても嬉しく、誇りに思っています。

    HINATA.M:
    僕は兵庫県の出身で、小学校1年生のときにマイケル・ジャクソンのダンス映画を見て衝撃を受け、ダンスを習い始めました。サッカーも習っていたのですが、高校にダンス特待生で入学できることになったのを機に、ダンス一本に絞り、当時まだ珍しかったプロダンサーを目指して本格的に活動を始めました。高3のときに、KADOKAWA DREAMSのエグゼクティブプロデューサーを務める、当時ダンサーのKEITAさんに声をかけてもらったのをきっかけに、オーディションを受けて入団し、現在はダンサーとして公演や各種イベントに出演しているほか、ダンス教室での指導も行っています。

    KISA:
    私は岡山の生まれで物心ついたころからずっとダンスをしていました。高校時代にプロのダンサーを夢見て上京し、高校3年生のときにKADOKAWA DREAMSのオーディションを受けて合格、以来5年間ずっとKADOKAWA DREAMSとして活動しています。もともとソロでダンスをしていたのですが、KADOKAWA DREAMSに入って初めてチームで踊る楽しさに目覚め、仲間の存在の大切さを実感しているところです。

    KELO:
    私は川崎の出身で、今から20年以上前、中学生のときにダンスを始めました。そのころ、不登校になっていた私に兄がダンスのビデオを見せてくれたのがきっかけです。当時は今のようにヒップホップ系のダンスは身近ではなかったですし、習える場所もほとんどありませんでしたが、とにかくダンスがしたい一心で伝手(つて)を求めていろいろなところに赴き、様々なダンサーの方に教えてもらい、練習に励みました。やればやるほど、だんだんうまくなって褒められるので、嬉しくてまた頑張る・・・の繰り返し。そうするとだんだん自分に自信がついてきて、ひるまず学校にも再び通えるようになりました。高校入学後はいろいろな大会やイベントにも出場するようになり、「復活ダンス甲子園」で2連覇、アメリカ・アポロシアターのアマチュアナイトで年間チャンピオンを獲得しました。今はフリーのダンサーや振付師として活動しつつ、昨年からは「川崎でストリートダンスを盛り上げたい」という想いに共感して、KADOKAWA DREAMSに参加しています。

    自分の好きなことに集中すれば、「居場所」はおのずと見つかる

    藤田:
    ありがとうございます。皆さん、自分の「好きなこと」に熱中して一直線に歩んでいらっしゃるところが、すごくかっこいいですね。私は今、「iBASHOプロジェクト」に参画して、地域で若者が安心して過ごせる居場所づくりに挑戦しています。学校や家庭だけでは「行き場」を失いがちな若者たちに、第三の居場所を提供したいという思いから始まったプロジェクトです。iBASHOプロジェクトが行った調査では、10代の若者の75.8%が「居場所が必要」と回答しています。皆さんもジャンプロープやダンスを通じて自分の居場所を見つけ、そこから世界へ挑戦してこられましたが、自分の「居場所」を見つけるために大切なことは何だと感じていますか?

    KAI:
    居場所は、自分の好きなことに挑戦できる場所のことだと思っています。居場所を見つけられるのは、自分自身だけ。つまり、居場所を見つけるにはほかの誰でもない、自分が動いてみるしかありません。好きなものがあるなら見に行ってみる、気になる人がいるなら会いに行くのが大切です。「特に好きなものがない」という人も、まずはいろんなところに行ったり、本を読んだりして世界を広げると、思いがけない出会いがあるはず。私も、たまたま高校の文化祭に行ってジャンプロープに出会ったことで、人生が変わりましたから。

    KISA:
    私にとっての「居場所」は、自分の好きなことができる場所、それを受け入れてもらえる場所です。好きなものって、探していてもなかなか見つからないものですよね。「見つける」というよりは「出会う」ものかもしれません。出会うためには、先ほどKAIさんがおっしゃったように、動くことが大切です。その点、川崎はいつも何かしらイベントが行われていて気軽に見られる環境が整っているので、「出会い」には最高のまちじゃないですかね。何気なく顔を出したイベントで、好きなものが見つかるかもしれないので、まずは出かけてみるのがいいんじゃないでしょうか。もし、ダンスに興味がある人がいたら、ぜひ私たちのダンスを見に来てほしいです。

    HINATA.M:
    KISAと同じく私にとっても居場所=好きなことをしている自分が受け入れてもらえる場所。といっても、そこにいる人が全員自分と同じような人である必要はなくて、いろんな人が集まっている場所がいいですよね。いろんな人がいて、それぞれの好きなことや得意なことを認め合える場所がいい。その意味で、今所属しているKADOKAWA DREAMSは自分にとってまさに理想の居場所です。ダンサーだけじゃなくて振付師やミュージシャンなどいろいろな職業の人や、様々な背景を持っている人がいますし、同じダンサーでも考え方やダンスのスタイルがそれぞれ違うので、すごく刺激になるし、たくさんのことを学ばせてもらっています。

    KELO:
    そもそも、無理に「居場所を見つけよう」とか思わなくていいのでは?と考えています。それよりも、もっと「自分が好きなもの」にフォーカスしたほうがいい。「居場所ありき」で考えるのではなく、まずは好きなものをとことん突き詰めていくと、おのずと「居場所」みたいな場所に辿り着くのではないでしょうか。私は金子みすゞさんの「みんなちがって、みんないい。」っていう言葉が大好きですが、残念なことに私たちは幼稚園ぐらいのときから、「みんなで同じことをしよう」という教育を受けてしまってます。同じ制服を着て同じ時間に給食を食べて・・・。そんな中でどうしても感じてしまう「みんな同じじゃなきゃいけない」という思い込みから解放されて、自分は自分でいいと思えるようになったら、気負わずに過ごせる「居場所」も見つかるかもしれません。

    「やりたいこと、やってみなよ」という大らかな雰囲気が川崎の魅力

    藤田:
    頑張らなくてもいい場所、という意味での居場所は大事ですよね。iBASHOプロジェクトの調査でも、74.1% の人が「特に目的もなくいられる場所が欲しい」と答えていて、何気なく過ごせる居場所の必要性が浮き彫りになっています。先ほどKISAさんがおっしゃったとおり、川崎は幅広い分野のイベントも多いですし、近年ではストリートダンスや音楽など若者カルチャーが盛り上がっていて、居場所との出会いのチャンスも多いのではないかと思います。皆さんからみて、川崎のストリートカルチャーの魅力や特徴はどんなところにあると感じますか?

    KAI:
    市民の皆さんが、誰でも柔軟に受け入れてくれるところが、一番の魅力ですよね。私自身、高校時代に武蔵溝ノ口駅前でブレイキンの仲間に入れてもらって練習を始めたのがきっかけで、毎週のように川崎に通うようになったのですが、よそ者である私を川崎の人たちはごく自然に受け入れてくれました。川崎には「やりたいこと、やってみなよ」という感じで、良い意味で放っておいてくれる大らかな雰囲気があって、そこが若者には心地よいのではないでしょうか。

    KISA:
    川崎にはいろんなカルチャーがあるのですが、それぞれが孤立せずに、うまく融合している点が居心地がいいなと思います。例えば私たちKADOKAWA DREAMSも川崎市市制100周年のビデオに出演させていただいたり、川崎病院の小児科の壁紙デザインをさせていただいたりと、他の分野のコラボレーションの機会をたくさんいただいています。

    HINATA.M:
    今年2025年からはKADOKAWA DREAMSのメンバーが、市内の小中学校で行う出張体験授業「KAWASAKI 10,000人プロジェクト」も始まりました。出張授業では、こどもたちのキラキラした表情を見ることができて、私たちダンサーにもすごく良い刺激になっています。自分自身がそうだったように、川崎のこどもたちにもダンスとの出会いが自分をもっと好きになるきっかけになったら、すごく嬉しいですね。

    KELO:
    全国的に見ると、まだまだストリートダンスへの理解が進んでいるとはいいがたい状況なので、川崎は本当に特別なまちだと思います。これからは、私たちももっと外向きの活動に力を入れて、市民の皆さんがもっと気軽にダンスを見たり体験したりする機会を増やしていきたいですね。私自身、川崎で生まれ育ちましたが、こどものころは川崎がストリートカルチャーの聖地のような場所になるなんて、思ってもみませんでした。それがここ20数年で文化が育まれ、定着して、成熟が進んでいます。私たちも、次の20年でより川崎が進化して「みんなちがって、みんないい。」のまちになるように、がんばっていきたいですね。

    夢中になれるものに出会ったら、まずは一歩を踏み出そう

    藤田:
    なるほど、確かにここ20年ほどでストリートカルチャーを取り巻く状況は大きく変わりました。ということは、今はまだ注目されていないニッチなカルチャーに、一人で黙々と取り組んでいる若者にもチャンスがあるということですよね。そんな人たちも含め、これを読んでいる若者の皆さんに、一言ずつメッセージをお願いします。

    KAI:
    いろいろなことに、どんどんチャレンジしてほしいです。自分がまだやったことのないことに挑戦し、その中で「これが好きだ」と思えるものを見つけたら、それに全ベットして(すべてを賭けて)、命がけで取り組んでください。胸を張って「自分はこれが好きだ」と言っても大丈夫です。全力で頑張れば、あなたを助けてくれる仲間にもきっと出会えます。まずは、一歩を踏み出してみてください。

    KISA:
    KAIさんのおっしゃるとおり、やりたいことに全力をかけて信じてやるのみです。やっている人が少ないことでも恥ずかしがったりあきらめたりしないことが大事。むしろ、それを信じて貫いた方が何年後かに「先頭を切っている人」になれると思います。

    HINATA.M:
    「これは!」と思うものを見つけたら、迷わず挑戦すること。そして、継続していくことですね。失敗しても大丈夫。何かに失敗したとしても、あきらめずに続けていれば、失敗から得た学びを生かして成功することができます。

    KELO:
    私からお伝えしたいのは、「無我夢中であれ」ということだけですね。周りはあまり気にせず、自分の本能に従って好きなことにフォーカスしてください。周囲が見えなくなる・聞こえなくなるくらい集中したら、何者かになれていると思うし、「居場所」にも辿り着けると思いますよ。どうしても自分が何をしたらいいかわからなくなったら、周囲の人に相談してみたらいい。私たちのダンスや公演、ワークショップなどを見に来てくれるのも大歓迎です。とにかく動いてみることで、いろんな景色が見えてくると思いますよ。

    藤田:
    まずは動いてみることですね。皆さん、今日は貴重なお話をありがとうございました。

    KAI(Instagram)

    KADOKAWA DREAMS

    シンカ

    川崎の若者文化を象徴する「ミューラルアート」

    「ミューラルアート」とは、施設所有者の許可を得たうえで、建物の壁などに描かれる作品のこと。まちの景観に彩りを与え、市民がアートに触れられる機会を作る目的もあります。

    川崎市では「かわさきミューラルアートさんぽ」のデジタルスタンプラリーなどで、駅周辺を彩るミューラルアートを歩きながら楽しむ機会を増やしています。
    このサイトの背景に流れている作品は、全長56mにもわたる川崎市役所本庁舎整備工事現場の仮囲いを、5人のアーティスト(DRAGON76氏、COOK氏、Kensuke Takahashi氏、Tokio Aoyama氏、WOOD氏)がミューラルアートで彩ったもので、「江戸を中心としたアート文化」と「若者文化」を融合させたもの。
    川崎市は、このようなストリートカルチャーをはじめとした若者文化を積極的に発信しています。

    川崎市内のミューラルアートのスポットはこちらから