母になってもアスリートの夢はあきらめない~女子バスケ・前澤 澪選手の挑戦
富士通レッドウェーブ
前澤 澪
※敬称略
結婚・出産を経て、2025年6月に富士通レッドウェーブ(かわさきスポーツパートナ)へ4シーズンぶりの復帰を果たした前澤 澪選手。競技と子育てを両立しながら新たなスタートを切った前澤選手に、現在の心境と地元・川崎市への想いを聞きました。
目次

母になり、再びコートへ
4シーズンぶりの現役復帰、おめでとうございます。久しぶりの競技生活はいかがですか?
前澤 澪選手(以下、前澤):
子育てと競技の両立でバタバタですが、毎日がとても充実しています。ただ、2022年に引退してからは結婚・出産という大きなライフイベントが続き、完全にバスケットボールから離れていたので、引退前のようなプレーができなくなっていることに歯がゆさも感じています。あきらめずに練習やトレーニングを重ねて以前の感覚を取り戻し、チームに貢献できる存在になりたいです。
現役復帰のきっかけは?また、家族やチームメイトなど周囲の反応はどうでしたか?
前澤:
もともと現役に復帰する予定はなかったのですが、2023年の4月に長女を出産した後、思いがけず、国体の神奈川県チームに入れていただくことに。そこで久しぶりにプレーしたら本当に楽しくて、「やはり自分はバスケが好きなんだな」と実感、もう一度挑戦しようと決めました。家族は驚いたと思いますが、「絶対やったほうがいいよ」と背中を押してくれました。チームの仲間も温かく迎えてくれ、特にこどものいるヘッドコーチには「子育ての大変さはよくわかるから、何でも相談して」と言ってもらえて、すごく気持ちが楽になりました。

子育てと競技の両立がもたらした成長とは?
実際に子育てと競技を両立して、どんなところに大変さを感じますか?
前澤:
覚悟はしていたものの、とにかく時間のやりくりが大変ですね。練習日は朝6時半に起きて身支度を済ませ、7時45分に娘を保育園へ。午前はチーム練習、午後は個人練習。帰宅後は夕食やこどもとの時間、入浴や寝かしつけを済ませ、寝た後に家事。気づけば、あっという間に1日が過ぎています。地方遠征など泊りがけで家を空けるときや、こどもが体調を崩して保育園に行けないときなどは、近くに住む両親に助けてもらうことも多いです。両親やチームメイト、保育園の先生など多くの方に支えられて子育てと競技が両立できていることに、日々感謝しています。
子育てと競技を両立することで、競技に対する考え方や姿勢に変化はありましたか?
前澤:
すごく変わりました!以前は自分のチームが勝つため、自分が上手くプレーするため、という想いが大きかったのですが、今は、「わが子に、自分が頑張っている姿を見せたい」という気持ちを強く持つようになりました。また、チームメイトと向き合う姿勢にも変化がありました。私はもともと自己判断で突っ走ってしまうタイプだったのですが、まだ自己表現が上手くできないこどもと接するうちに、「今どう感じているんだろう?何を考えているんだろう?」と。相手の意見や気持ちに寄り添うことが自然にできるようになりました。その積み重ねが、チームメイトの声をより丁寧に受け止め、チーム全体を思いやる姿勢につながっていると思います。

支援も遊び場も充実。子育てがしやすいまち・川崎
お子さんと過ごす時間のなかで、一番楽しいと感じることはどんなことですか?
前澤:
こどもの成長を間近で実感できることが、何より楽しいです。こどもの成長って本当に目覚ましいですよね。昨日までできなかったことが今日はできるようになっていますし、体も心もどんどん大きくなっていきます。その一つひとつの変化を見守っていると、自分自身も負けないようにバスケを頑張ろうという前向きな気持ちになります。
前澤選手にとって川崎は子育てがしやすいまちですか?
前澤:
はい、とても子育てがしやすいまちだと思います。私も現役復帰に合わせて2025年1月に川崎市に戻ってきたのですが、4月から自宅近くの市立保育園に預けることができて、本当に助かっています。まだ利用したことはありませんが、病児保育制度や一時保育制度など子育て支援の制度も充実しているそうなので、どんどん活用していきたいと思っています。
休みの日はお子さんとどんなことをして過ごすことが多いですか?川崎市内でおすすめスポットなどがあれば教えてください。
前澤:
遊びに出かけることが多いですね。川崎市内には親子連れで楽しめる公共施設やショッピングモールがたくさんあります。公園もたくさんありますが、中でもよく出かけるのが市内各地にある「こども文化センター(児童館)」です。娘に「どこで遊びたい?」と聞くと、「こども文化センター!」と即答するほど気に入っています(笑)。センターでは、たまたま居合わせたこども同士がすぐに仲良くなって遊び始めるので、その姿を見るのも楽しいですね。私も他の保護者と子育て情報を交換したり、センター内にいる子育て支援員の方にいろいろ相談したりできるので、とても助かっています。

「川崎スポーツパートナー」として地域に恩返し~ バスケ教室でこどもに夢を
川崎市はスポーツが盛んなまちでもあり、アスリート育成・支援の制度も充実しています。前澤選手は川崎スポーツパートナーである富士通レッドウェーブの一員として、どんな活動をしていますか?
前澤:
川崎市のスポーツパートナーとして、地域のこどもたちとバスケットボールを通じて交流しています。たとえば2025年7月には、中原区が開催した市内小学生向けのバスケット教室に参加し、こどもたちを指導しました。同じ地域のこどもたちと触れ合うことができて、私自身とても楽しませてもらいましたし、こどもたちができないことに一生懸命チャレンジしたり、何かを吸収したりしようとする姿勢から、私も多くのことを学びました。
実は、私自身も小学生のときに憧れの選手に会ったことがきっかけで、プロのバスケットボール選手を目指すようになったんです。今度は自分がこどもたちにとっての“憧れ”になり、夢に向かって挑戦するための原動力になれたら本当に嬉しいです。これからも、そんな存在でいられるように努力していきたいと思っています。
後輩のアスリートには、どんなことを伝えていきたいですか?
前澤:
これまでの女性アスリートは、結婚や出産を選ぶのか、それとも競技を続けるのか。どちらか一方しか道がないように考えがちだったと思います。でも本来は、どちらかをあきらめなければならないと、縛られる必要はないと思うんです。結婚・出産も競技、両方を選んでもいい。もちろん、どちらか一方を選んでもいい。どう生きるにせよ、選択は自分自身でできるんだ、ということを伝えていきたいです。私自身も実際にその道を選んで戻ってくることができました。たくさんの方の力をお借りしていますし、まだまだ子育ても競技も道半ばではありますが、精いっぱい取り組んでいる姿を見せることで、将来に悩んでいる女子アスリートの皆さんの背中を少しでも押すことができたら嬉しいですね。

周囲への感謝を忘れず、子育てと競技の両方を楽しみたい
今後の目標を教えてください。
前澤:
まずはコンディションをしっかり整えて、チームに貢献できる存在になることが今の一番の目標です。ただ、子育てと競技を両立する中で、自分の力だけではどうしても限界があります。だからこそ、信頼できる周囲の人やサポートしてくれる人に頼ること、自分で抱え込まないことがとても大事だと思っています。助けを借りることで自分も無理なく力を発揮でき、よりよい結果につなげられるのではないでしょうか。幸い川崎市には頼れる子育て支援制度が充実しているので、上手に行政の支援にも頼りながら、子育てと競技をうまく両立して、両方を楽しみたいと思っています。
最後に地元・川崎市の皆さんへメッセージをお願いします。
前澤:
応援してくださる川崎市民の皆さんの存在が、私にとって本当に大きな力になっています。ホームタウンである川崎でプレーできることに感謝しながら、これからも全力で頑張っていきますので、引き続き温かい応援をよろしくお願いします。
まえざわ みお
1991年神奈川県生まれ。2014年に松蔭大学を卒業、富士通レッドウェーブに所属。ポジションはSG(シューティングガード)。Wリーグ2014-15シーズンのルーキーオブザイヤーを受賞。2015年にはユニバーシアードとアジア選手権の日本代表に選出され、アジア選手権で金メダルを獲得した。2021-22シーズンには富士通の6シーズンぶりのWリーグファイナル進出に貢献し、プレーオフベスト5を受賞した。同シーズン終了後に現役を引退。結婚、出産を経て2025年6月に現役復帰を果たした。
こども文化センター シンカ
子育てしやすいまち・川崎の「遊びと交流の拠点」
川崎市内各地にある「こども文化センター」は、こどもたちがのびのび遊び、学び、友だちと出会える場所として親しまれています。0歳から18歳未満のこどもとその保護者が気軽に集まり、遊びながら情報交換をしたり、地域の人たちと交流したりできる地域の子育てコミュニティの中心的な存在です。
川崎市では、待機児童ゼロを達成し続けるなど、保育施設の整備やさまざまな支援制度も充実しています。親が安心して子育てに向き合いながら、自分らしい生活を楽しめる環境づくりが進められており、こどもたちの成長を見守りながら、地域のつながりを感じられるまちとして進化を続けています。