かわさき未来トーク
生活

JR東日本川崎駅の1日に密着。駅から広がる地域包括ケアとは?

早朝から深夜まで、1日に約20万人の利用客が乗車するJR川崎駅。賑わいの裏側では、サービス介助士の資格を持つ駅係員の皆さんが、高齢者や障がいのある方、子育て中の利用者など、さまざまな人々の移動を支えています。その仕事は単なる「駅のサービス」にとどまらず、地域の安心や暮らしを守る地域包括ケアの一端を担うもの。駅係員の皆さんの1日に密着し、駅から広がる地域包括ケアを探りました。

目次

    ※敬称略

    巨大ターミナル駅・JR川崎駅を支える仕事

    今日はJR川崎駅の駅長はじめ3名にお越しいただきました。まずは、駅長から自己紹介をお願いします。

    駅長:
    電車の運転士をしていた父の影響で、高校卒業後に日本国有鉄道(現・JR東日本)に入社しました。運転士や企画部門などを経験し、2023年の7月からJR川崎統括センターの所長として川崎駅、鶴見駅や南武線の各駅、乗務員職場などを管轄し、約450名の社員とともに日々、安全・安心な電車の運行管理、お客さまのご案内に努めています。私自身、4歳から18歳まで川崎市で育ちました。ふるさと川崎の皆さまの生活の足を支える仕事ができることは、私にとって大きな喜びです。

    快適に安心して駅を利用してもらうために、どんなことを心掛けていますか?

    まず、「お客さまの視点」を失わないことです。駅は、日常生活で使われるお客さまのほか、受験や大切な商談など「人生の分岐点」に立っている人も利用するケースが多い場所。時にはお客さまの人生を大きく左右する可能性のある場所で働いていることを忘れないように自戒していますし、社員にも常々伝えるようにしています。

    続いて、社員の小山さんと佐藤さん、自己紹介をお願いします。

    小山(仮称):
    私は2025年の4月にJR東日本に入社し、半年間の研修を経て、川崎駅に配属になりました。現在は主にみどりの窓口できっぷの発券業務に携わっています。入社前まで特に鉄道の知識が豊富というわけでもなかったので、わからないことも多く戸惑いましたが、毎日の業務を通じて学びながら一生懸命取り組んでいるところです。

    佐藤:
    入社して13年になります。入社後は駅で5年間窓口業務などを経験した後、南武線で約6年間、乗務員を務めました。現在は川崎駅で改札業務と内外で行われるイベントの運営業務を担当しています。安全な列車運行を直接担う乗務員から、お客さまを迎える駅の業務へと役割は変わりましたが、鉄道と地域をつなぐ仕事に関われていることに、大きなやりがいを感じています。

    早朝3時、今日も安全と安心を運ぶ1日が始まる

    朝早くから深夜まで多くの方が駅を利用されています。どのような勤務体制で対応しているのですか?

    小山:
    川崎駅の業務は「改札業務」と「みどりの窓口」業務に分かれています。みどりの窓口が営業開始する朝10時まではオープンに向けた準備作業、10時から19時まではきっぷの販売などの窓口業務、19時以降は券売機の売り上げの管理や、改札業務のサポート。終電後はシャッターを閉めて改札機の中のきっぷを取り出して、特に事故やトラブルがなければ、0時50分頃に業務が終了。大雨などの自然災害や、突発的な事故により終電が遅くなってしまうと、終業が1時とか1時半になってしまうこともあります。

    佐藤:
    初電(始発電車)対応の場合は、22時前にいったん業務を切り上げて駅の中にある休養室に泊まり、起床して初電(現在の川崎駅の京浜東北線の始発電車は午前4時34分)の準備をします。起床後、駅構内の安全確認やエレベーターや自動券売機などの動作確認など、始業準備を行います。その後シャッターを開けてお客さまをお迎えし、1日の業務が本格的にスタートします。

    「サービス介助士」資格取得を推進。誰もが安心して利用できる駅を目指す

    皆さんの名札に「サービス介助士」と記されていますが、この資格はどのようなものなのでしょうか?

    駅長:
    サービス介助士は公益財団法人日本ケアフィット共育機構が認定する民間資格です。JR東日本ではご高齢のお客さまやお身体の不自由なお客さまが、駅や列車を利用される際に必要な介助技術とホスピタリティマインドの習得を目的に、2005年から、当社グループを含めた会社全体で資格を取得することを推し進めています。現在ではグループ企業を含め全社員の約51%がサービス介助士の資格を取得しています。川崎駅でも私を含め、ほとんどの社員が有資格者です。

    駅長も資格を取得されているんですね。取得前後でホスピタリティについての意識や、お客さまへの対応に変化はありましたか?

    駅長:
    入社以来、車いすをご利用のお客さまや目の不自由なお客さま方への対応には注意してきましたが、当時は自己流に頼っていました。サービス介助士の講義を受けて初めて、不快感を与えていないかという視点に気づかされました。たとえば、車いすをご利用のお客さまと目線の高さと合わせているか、目の不自由な方に急に背後から声をかけて驚かせていないか、といった点を立ち止まって確認できるようになったことは、大きな学びでした。

    佐藤:
    私も11年前にサービス介助士の資格を取ったことがきっかけとなり、『こうすればお客さまの不安を和らげられる』と知識を身につけたうえで、接することができるようになったことで、お客さまに安心していただけているのであれば、とても嬉しく思います。

    小山:
    私も自分に知識が増えたことで、自然にコミュニケーションが取れるようになった気がします。

    地域の一員として、駅も「地域包括ケア」の担い手でありたい

    介助が必要なお客さまとの印象的なエピソードがありましたら、教えてください。

    佐藤:
    私たち改札係員は車いすをご利用のお客さまや白杖をご利用のお客さまが改札に来られた際に、スムーズにご利用いただけるよう手配を行うのが日常業務の一つですので、毎日のように顔を合わせるお客さまも少なくありません。そのようなお客さまとは「お帰りなさい」「今日はこの時間にお出かけなんですね。混雑しているのでお気をつけていってらっしゃい。」といったお声掛けが生まれ、時には「ただいま」「帰ってきたよ」と声を返していただくこともあります。自分たちの働く駅をお客さまが安心して使っていただいていることが伝わってきて、とても嬉しく、改めてこの仕事の喜びや意義を感じています。

    小山:
    私が印象に残っているのは、改札業務中に高齢のお客さまをご案内したエピソードです。そのお客さまは「踊り子号に乗りたい」とのことでしたが、踊り子号に必要な特急券をお持ちではありませんでした。通常なら「特急券を別途ご購入下さい」とご案内するのですが、そのお客さまは券売機の操作に慣れていないご様子でしたので、発券機の操作手順を説明しながら購入をお手伝いしました。無事にきっぷを手にしたお客さまから何度も感謝され、その後笑顔で乗車されていきました。急速に電子化・自動化が進み、最近はスマートフォンや交通系ICカードだけで電車に乗り降りできる便利な時代になりましたが、その変化への対応が難しい方もたくさんいらっしゃいます。「デジタルに不慣れなお客さまを支えるのも、私たちの大切な役割だ」と実感した出来事でした。

    駅長:
    最近は認知症のお客さまへのサポート強化にも取り組んでいます。2025年9月、当駅では川崎区役所地域支援課にご協力いただき「認知症サポーター養成講座」を開催。これから積極的に認知症サポーターの養成に取り組んでいきたいと考えています。困っている方・助けが必要な方にさっと手を差し伸べられる体制を整えることで、誰もが安心して過ごせる川崎駅を作っていきたいですね。川崎市では今、高齢者や障がいのある方を含め誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるための「地域包括ケア」を推進していますが、川崎駅も地域の一員としてケアの一端を担う存在でありたいと願っています。

    最終電車の見送り。1日の終わりは新たな1日の始まり

    1日の終わりをどんな気持ちで迎えますか?

    駅長:
    駅にとって、1日の終わりは同時に新たな1日の始まりでもあります。終電が出て窓口や改札業務が終わると、夜の間に点検や清掃、整備といった重要な仕事が始まります。夜は、一日の業務を終えた安堵と、翌日を安全に迎えるための緊張感――この二つを同時に味わう時間です。この両方の感情があるからこそ、駅としての役割を全うできるのだと思います。

    小山:
    シャッターを閉めると、昼間の賑わいが嘘のように駅構内は静まり返ります。その静けさの中で、日中どれだけ多くのお客さまに利用していただいていたかを改めて実感し、駅係員としてこの場所で働ける誇りと責任の重みを深く感じます。駅長が話す「夜は新しい1日の始まり」という趣旨も理解できますが、正直、私は「今日も無事にやり切れた」という安堵でいっぱいです(笑)。

    佐藤:
    鉄道の仕事はインフラの仕事なので、「いつもどおり」が一番です。お客さまも普段通りの景色の中で安心して過ごせる、それが駅の最も理想的な状態だと考えています。何もなかった日は安心感がありますし、「今日も無事に終えられた」という満足感も大きいです。翌日の担当者に「今日は特に何もなかったよ。明日もよろしくね」と安心して引き継げるよう、目の前の仕事に一つずつ丁寧に取り組んでいきたいと思います。

    「新しい始まりを一緒に」。駅と市が一体となって地域の魅力を発信

    最後に今後の展望と市民の皆さまへのメッセージをお願いします。

    小山:
    まずは、いつも川崎駅をご利用いただき本当にありがとうございます、という気持ちです。私自身はまだ川崎駅で働き始めたばかりで、先輩方に支えられながら業務に取り組んでいます。
    まだ一人でできないことも多いですが、まずは先輩に頼りながら確実に業務をこなしていくことを心がけています。そして、一日でも早く先輩に追いつき、将来的には自分ひとりでもお客さまや川崎市民の皆さまに快適にご利用いただける駅づくりに貢献できるよう、努力していきたいと思っています。


    佐藤:
    いつもご利用いただき本当にありがとうございます。近年は駅の役割が大きく変わりつつあり、「人と地域をつなぐ場」としての役割が増しているように感じています。私自身も地域と連携したイベントの運営やお客さまのお手伝いをする中で、JR東日本が提供できる価値が変化していることを感じていますし、変えていかなければならないとも思っています。川崎駅では、車いすや白杖をご利用のお客さまへの介助サービスなど、誰もが安心して快適に利用できる環境づくりにも力を入れています。こうした取り組みも含めて、「川崎駅が最寄り駅でよかった」と思っていただけるような駅にしていきたいです。

    駅長:
    彼の話すとおり、駅は今まさに「移動の場」から「体験の場」へと進化しています。お客さまは単に電車に乗り降りするためだけでなく、駅ナカで買い物を楽しんだり、産直イベントで地方の特産品を体験したり、駅での時間そのものを楽しんでいらっしゃいます。こうして新しく生まれ変わろうとする今だからこそ、私たち川崎駅は、川崎市が掲げる「新しいはじまりを、さあ、一緒に」というコンセプトに深く共感しています。芸術や音楽を通じた地域の活性化といったまちのビジョンを、駅が具体的な形にするという役割――駅と市が一体となって地域の魅力を発信できる可能性を強く感じます。
    これまでにも川崎駅では、地域の特産品を紹介する産直イベントのほか、地元アーティストによる音楽ライブなど、さまざまな取り組みを通じてお客さまに新しい体験を提供してきました。こうした活動を通して、駅がまちの魅力を発信する拠点として機能し、川崎市民の皆さまに「川崎駅があってよかった」と感じてもらえるようにしていきたいと思っています。皆さま、これからも川崎駅をよろしくお願いします。そして、これからの川崎駅にどうぞご期待ください。

    シンカ

    川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョン

    「川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョン」は、高齢者をはじめ、障害者やこども、子育て中の親などに加え、現時点で他者からのケアを必要としない方々を含めた「全ての」地域住民が住み慣れた地域や自らが望む場で安心して暮らし続けられるようにするための基本的な考え方を示したものです。川崎市では今、このビジョンに基づき、地域で医療・介護・予防・住まい・生活支援など、必要なケアが地域において一体的に提供されるための仕組み「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。

    ビジョンや具体的なサービスについてはこちら
    川崎市 : 川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョンの策定について